音楽の倍音とスピーカーの高調波歪(その1)

下の図1は前回Markaudio低域歪がいかに低いのかを説明した資料の再掲です。横軸が音量、縦軸が歪率です。

107dB/0.2m(実際は100㎝/20㎝x 6db -> 107㏈ – 30㏈ = 77db/mの音量)で赤と青がAlpair10 Sota11の測定値。ピンクがx社の16㎝最新ウーハーです。107.5㏈あたりの歪率を比較してみると 3次高調波で6.4/0.8 =8倍程度の相対歪比率です。いったいこれが音楽再生時にどんな影響があるのでしょうか。

(図1)

3rd distortion

 

 

 

 

次に音楽の倍音の成り立ちを説明している良い資料がありますのでご覧ください。これはJohn Powell さんと言う人が書いた響きの科学と言う本から抜粋したものです。この人物理学の博士号と作曲の修士号を持っている変わった人ですが、ギターをパブで弾いて酒代にしていた愛すべき人です。

(図2)

倍音抜粋1

 

 

 

 

 

 

 

図2は左が倍音の個々の信号のイメージで(2-5倍まで記載されていますがずっと倍音はあります)その倍音の音圧の混合比によって楽器の波形が決まることを説明しています。図1でテストに使った比較用最新ウーハーはこの倍音の比率に6.5%の偽の3倍音信号が加わった状況であることを示そうとしています、当然5倍、7倍の倍音も同じ様に数%の増加が見ることができます。これを一度に加えて再生された音は図2の右側の楽器個々の信号とは違った楽器の信号になってしまうと言う事です。

音楽の純粋な変換機としてみたらアンプの歪どころの話では無く『再生詐欺』と言うか、ステレオサウンドの良い音≠リアルサウンドと言う大問題なんですけどね。

ところが音楽再生はどこかに置いておいて『このスピーカーはパワーを入れると良く鳴るのにMarkaudio_Sotaは音色が違う』とオーディオショップのオジサンに言われてしまったのです、これは遠路数百キロでも愛車でかっ飛ばして、自分の耳で確認するしかないと、実地検分をしに行ってきました。

さてその現場の風景です。

『これがMarkaudio_Sotaの音。 それからこれがxxxの音。これがyyy社の音どうですか中島さん。』

このxxx社の音まさにスコットラファロやロンカーのベースの音程がボンボン鳴って音程がわかりません。でも比較に使ったSotaのViotti oneと言う新開発モデルは本当にスケールが目の前に浮かぶ様に音程がはっきりしています。ついでに、xxx社はクロスオーバー当たりの位相がぐらついていて一部楽器の音がわからないという問題した。でも広域のソフトドームで優しくしなやかな音を重ねてステキな音作りと言う感じです。yyy社はもっとひどいウーハーでMarkが顔をしかめる姿がダブります。

私は心の中で『これが良い音って言うのか楽器の音ではなく、独自のスピーカー音だな~。』
そしてつい声を出して『このスピーカー歪んでますよね。・・ムニャムニャ・』なんて余計なことを言ってしまいました。(なんかシラケるムード…)

でもまあ遠路尋ねた甲斐はありました確認できましたから。でもこれは世の中の高級スピーカーが衰退している大きな問題の一つなのかもと感じました。

結局、音作りの基本方針が音楽ソースの純粋な再生では無い事。ジムランとアルテックから始まったオーディオサウンドで育ったオジサンたち(私もMarkに出会わなければ同じ穴のおじさんであったかもしれませんね)の判断基準は楽器の再生では無いと言う事です。残念ながら・・・

(余談ですが衰退と言えば先日アキバの繁栄しているイヤホンショップに行ったら半分以上が『ハイレゾハイレゾ』って歌って値段が2万円以上です。40000㎐以上を含んだ音楽ソースがこんなに町に氾濫してるわけないのに❢❢❢❢❢。やっぱ音は本物を伝えるのは難しい業界なのかな。)

今回の資料図2は『響きの科楽』早川書房からの抜粋です。