fidelitatem sound のオーディオと音楽ブログ
ジャズとオーディオのニッチな世界

床置きスピーカーdeバッフル効果

みなさんこんにちは、スガノです。

前回の瓶スピーカーの記事はご覧になりましたか?もう作ってしまったという方は、その行動力を少し私に分けていただけると助かります。。

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こちらは以前の試聴会で紹介した、床置きスピーカー(ユニットはAlpair5v3)です。2L弱の小ぶりな箱ながら、厚みのある音に驚いた方もいるのではないしょうか。

さて、「なんで床に置く必要があるの?」という疑問が出ると思いますが、簡単に言うと「中低域の厚みを出すため」です。

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ご存じの通り、スピーカーには指向性があり、高域ほど鋭く前方に強く音波を放射し、低域ほど前にも後ろにも満遍なく音波を放射します。

スピーカーの指向性は、振動板の直径や形状・バッフル板のサイズなどによって変わるので様々ですが、通常のブックシェルフサイズのスピーカーであれば、(極端にいうと)約1kHzまではスピーカーの前後(4π空間)に音を放射し、それより上では指向性が狭まり前方のみ(2π空間)に音を放射するのが一般的です。

つまり、ユニット単体の周波数特性がフラットだったとしても、それをエンクロージャーに取り付けたとき、1kHz以下の周波数の音圧は高域の音圧に比べて徐々に目減りしていき、100Hz以下では6dB減少します。これを「バッフルステップ」と呼びます。

オルソンの実験として有名な実験結果がありますが、これは上記の指向性の変化による「バッフルステップ」と、バッフルの角や形状による回折波干渉の「エッジディフラクション」の両方の影響をを示しています。

オルソンの実験結果

この「バッフルステップ」と「エッジディフラクション」は混同されて使用されている場合が多いと感じますが、

実は別々の現象です。詳しくは「自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック」をご参照ください。

(自作スピーカー マスターブック 公式HPはこちら

Tozzi One バッフルステップ・エッジディフラクションのシミュレーション結果

上記の画像は、Tozzi Oneのバッフル形状による影響を簡易的にシミュレーションしたものです。(VituixCAD2というソフトを使用しています)

あくまでシミュレーションなので推測でしかありませんが、Tozzi Oneの妙にハリがある明るい音質は、この1k~2kHzにかけての音圧の盛り上がりが一因となっているのかもしれませんね。

この結果からも、1kHzから音圧が減少し、100Hz以下の周波数が高域に比べて6dBほど減少しているのが分かると思います。

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ここまで解説した理論は、4π空間(無響室や、壁や床・天井から十分に離れた空間)の場合の理論です。

それが2π空間になると、事態は一変します。

商業施設などにある天井スピーカーを想像するとわかりやすいと思いますが、ユニットが天井や壁に埋め込まれたときに壁は無限大バッフルとして機能します。

2π空間ではスピーカーの前方にしか音波は広がらないので、バッフルステップはおきませんしバッフルの角もないのでエッジディフラクションもなくなります。

つまり中低域の音圧が減少することもないし、周波数特性の乱れも最小にすることができるということです。

繰り返しになりますが、「なんで床に置くの?」という疑問に対しての回答は、「中低域の音圧減少を防ぐため」になります。(天井や床がベターかもしれませんが、設置が難しいという現実的な問題があります)

床に置いた時と床から離した時の特性の比較

上の画像を見ると、2π空間の特性と4π空間の特性が一目瞭然です。床に埋め込んでいる訳ではないので完全な無限大バッフルではありませんが、それでも中低域の音圧の減少が無いことが分かります。

1kHzの音圧を基準にして-6dBとなる周波数を見ると、床置きは45Hz、バッフル効果なしでは65Hzです。低域における20Hzの差は皆さんもよく理解していると思いますが、バッフル効果だけでここまで変わるとは意外ですよね。

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ちょっと話は変わりますが、ユニットを上向きに設置したことでAlpair5v3のモノサスペンションの効果が最大限発揮されているように思われます。

通常、スピーカーユニットは振動系を「エッジ」「ダンパー」の2つで支えています。しかしAlpair5v3は信号への反応を極限まで高めるために、ダンパーを使用しておらず、フロントのゴムエッジだけで振動系を保持しています。

ダンパーのないユニットを横向き(通常の向き)で使用した場合、振動板やボイスコイルの重さで振動系の位置が本来の位置から横にズレてしまい、歪やノイズなどを発生してしまいます。もちろんMarkaudioのユニットはそれが起きないように設計されており、製造の際も誤差が出ないように精度よく組み立てられているため通常の使い方では問題になることはありませんが、重力の影響を完全にゼロにできているわけではありません。

この床置きスピーカーの様にユニットを上向きに取り付けた場合は、重力によって振動系の位置が横にズレることはないので、モノサスペンションによる微細信号の再現性とリニアリティの高さが十二分に発揮されるのです。

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ここまで偉そうに理論を語ってきましたが、肝心の音はどうなんだというと、非常に厚みのある濃密な音がします。

重心が低く、繊細な音と腰の据わった音が部屋全体に広がり、なんだかライブ会場で聴いているような雰囲気が漂います。Markaudioのユニットは全体的にコーンが浅く、特にAlpair5v3は小口径ということもあり高域の指向性が比較的広くなっているので、床置きの無指向性スピーカーにマッチしていると思います。

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さて、このスピーカーの作り方について簡単に説明します。

まず適当な木製ボウルをご用意ください。(私はニトリで1000円くらいのを買いました。上の直径が23cm,底の直径は10cmでした。)

意外と底の板厚は厚い

あとは底に穴を開け、上にボウルの直径に合わせ丸く切った板を貼り、Φ20mmのダクト用穴、内径20mm長さ5cmの塩ビ管を接着したら完成です。

木製のボウルはウレタンなどで仕上げされている場合が多いので、ヤスリで塗装を剥がしてから接着すると良いでしょう。

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長々となってしまいましたが、案ずるより産むが易しです。理論なんて置いておいて、皆さんも是非部屋全体に響く無指向性スピーカーを作ってみてはいかがでしょうか?

次はOM-MF4Micaを複数使用したアレイスピーカーを考えています。上手くいったらまたご紹介させていただきますので、是非ご覧ください。では。


Posted by admin on 7月 30th, 2022 :: Filed under 未分類

ジャックダニエルの瓶スピーカー

みなさんこんにちは、スガノです。

Markaudioファンのみなさんは、いつからスピーカーの自作を始めましたか?

私は中学生の時にオーディオに興味がわきはじめ、その後はスピーカーやイヤホン、ヘッドホンなどを安く買っては分解し、その仕組みや音の変化などを楽しんでいました。

本格的にスピーカー自作を始めたのは大学生になってからで、Markaudioのユニットと出会ったのもその頃でした。

Markaudioユニットで最初に使用したOM-MF5 その純度の高い音に驚いたのを覚えています。

学生サークルや仕事を通してオーディオ関連の方々と交流していると、知識や工作の腕前に圧倒されることが多く、ましてやこのブログを読んでくださっている方に自作のあれこれを語っても響かないかもしれませんが…

とはいっても、イベントなどで紹介したときは意外と新鮮な反応を示してくださるお客様もいたので、今回は風変わりな自作(試作?)スピーカーを紹介したいと思います。

ジャックダニエルの空き瓶を使用した瓶スピーカー

これは2020年のStereo誌企画「学生対抗スピーカー甲子園」に出場した時の作品のリメイクで、上記の通り3Lのジャックダニエルの空き瓶に穴を開け、OM-MF4を取り付けたものです。

吸音材を一切使わないうえに、ガラスの筐体なんて酷い音がしそうですよね?これが意外と良い音がするんですよ。

ガラスのヤング率は木材の5倍程度ありますし、ジャックダニエルの瓶は厚みが5mm程あるので、どっしりと頑丈な筐体が木材とはまた違った響きを出しているのか、低域に芯があり迫力があります。

注ぎ口がバスレフポートとしてうまく機能しているようです。

疑似無響室測定で測定された周波数特性

このスピーカーは瓶なので、もちろん蓋ができます。キャップを締めることで密閉型にもできます。

上の周波数特性図はバスレフと密閉を比較したものです。

バスレフは60Hzくらまで伸びていますが、750Hzあたりにポートから漏れた中域が干渉し山谷ができています。このサイズとしてはかなり低域が出ており、中高域にかけてもフラットに伸びていてOM-MF4の優秀さが見て取れます。

密閉は200Hzからだら下がりですが、先にみられたような中域の山谷がなくフラットです。バスレフとは異なりスッキリした印象で自然な中低域なので、ボーカルやギター単体ならこちらで聴きたいですね。

今年のオントモムック付録:OM-MF4Micaを使用して作れば、少し低域が落ち着き、バスレフでバッチリのチューニングになるかもしれません。

Markaudio CHN40推奨エンクロージャーの一例

実はこのジャックダニエル瓶スピーカーは、MarkaudioがCHN40の推奨エンクロージャーとして公開している設計とかなり近いものになっています。つまりT/Sパラメーターの観点からも上手くチューニングが取れているということですね。

本来は吸音材を入れるので、バスレフの低域の盛り上がりや中域の山谷は減少し、よりフラットに近づくことでしょう。(私は見た目を優先したので吸音材は入れませんでした)

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この瓶スピーカーの作り方ですが、私はこちらの動画を参考にしました。↓↓

もはや参考というよりはパクリですね(笑)

(決して瓶スピーカーに関して我々がオリジナルだと主張するつもりは全くありません)

瓶がスッポリ入る容器に水を張り、位置がずれないように治具を用いながらガラスホールソーで穴を開けます。

動画では固定用ネジのために鬼目ナットを挿入していますが、私の腕ではガラスを割ってしまいそうだったので、ユニットを直接瓶にボンドで貼り付けました。

ジャックダニエルの空き瓶はメルカリなどで1個1000円程度、ガラス用ホールソー(Φ70mm)はアマゾンなどで2000円程度で購入できます。

他、ドリルや水を張る容器などがあれば自作できますので、みなさんもいかがでしょうか?

ガラスに穴を開けるときは、割らないようにゆっくり、かつ程よく力を入れながら、慎重に行ってください。

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床置きスピーカーも一緒に紹介しようと思っていたのですが、長くなりそうなのでまた次の記事にしたいと思います。

では、また。


Posted by admin on 7月 26th, 2022 :: Filed under 未分類

試聴会@コイズミ無線 NC9kit再販!

みなさんこんにちは、スガノです。

7月9日、コイズミ無線様で試聴イベントを開催してきました。

NC7v2 メイプル&ウォールナット コンビネーションモデル

新作NC7v2をはじめ、NC5HやNC9kitなど盛りだくさんの内容で、超満員の試聴会となりました。

お越しいただいた皆様、ありがとうございました。

商品の説明を行う社長・中島

今回初お披露目となる、OM-MF4Mica 、そしてCHP90Micaです。

Markaudioといえばアルミ・マグネシウム合金のメタルコーンというイメージをお持ちの方が多いと思いますが、

陰ながらペーパーコーンのモデルも人気商品となっています。

そしてペーパーコーンにマイカ(雲母)を混沙した、新たな振動板搭載モデルが登場しました。

OM-MF4Micaは今年のオントモムック2022の付録として、全国の書店などで販売されます。

https://www.koizumi-musen.com/fea/220712_mook/220712_mook.php

CHP90Micaはコイズミ無線様などで予約注文できます。入荷は8月頭予定です。

https://dp00000116.shop-pro.jp/?pid=169263655

キラキラ光るマイカが見えるでしょうか?

マイカが加わったことで、紙素材特有の軽やかな音に、ハリとツヤが出たような

非常に魅力的なサウンドになっています。ケブラー繊維も混沙されており、強度向上に寄与しています。

OM-MF4Micaは、より軽量化され、ギターの弦の擦れやボーカルの切れ味、スネアの立ち上がりの早さなど

応答が素早く、鮮明で繊細な音場の広がりを実感していただけるのではないでしょうか。

CHP90Micaはさらに本格的な音作りで、上記の魅力に加え40Hzまで再生できるポテンシャルをもっています。

13cm口径ですよ?このサイズでは信じられない再生力ですよね。ベースの最低音まで正確な音程で再生できます。

お客様にこのマイカ混沙振動板の魅力を手軽に体験していただけるよう、

弊社ではそれぞれに合ったエンクロージャーをご用意いたします。

縦置き
横置き

弊社では、オントモショップで販売しているLuxmanアンプ専用の、スプルース無垢材ケースを製造しています。

スプルースの木目のやあられ組みの美しさや、きれいな減衰特性によるアンプの制振・音質の改善などが評価され、

非常に売れ行きが好調です。(製造が大変だ…)

スプルースの良さをスピーカーにも生かしたいと考え、上の写真の「あられ組みスピーカー」を試作しました。

スプルースはピアノやギターなど様々な楽器に使われており、滑らかでクセのない音質になる傾向があります。

OM-MF4Micaの立ち上がりの早さにスプルースの柔らかな響きが加わり、特にピアノ音源では演奏者の指使いまでもが浮かび上がるような、素晴らしい表現力のスピーカーになりました。

低域は70Hzまで伸びていて、コンパクトなサイズながら十分な量感です。

見た目も音質も飽きの来ない、部屋に置きたくなるようなデザインにできたと思います。

(販売時期・価格などについては調整中のため、続報をお待ちください)

そして、お待たせしました。NC9kit再生産の目途がやっと立ちました。

8月末には、オントモショップ様、コイズミ無線様などで再販できると思います。

凹凸が噛み合うことで組み立てやすく空気漏れがなく、素人から玄人の皆さんにお勧めできる製品です。

赤松の温かく粘りのある響きがCHP90Micaの音の傾向とマッチしており、試聴会でも好評を得ていました。

製造できる数には限りがあるため、お求めの際はお早めにお願いいたします。

https://www.koizumi-musen.com/fea/220714_nc9/220714_nc9.php

現在再び新型コロナの感染者数が大拡大しており、今後しばらくイベントの開催が困難になるかもしれません。

試聴会で音をお聞かせすることができないのはとても残念ですが、おうち時間が増えるであろう今後は、

お客様のご家庭でマイカ振動板の音の良さを感じていただけたらと思います。

ご体調には十分お気をつけて、オーディオライフを送っていきましょう。

次回は床置きスピーカーや瓶スピーカーなどDIYの楽しさについて書きたいと思っています。では。


Posted by admin on 7月 20th, 2022 :: Filed under 未分類