ベーシストから(2)スコットラファロ

Sam Jones から始めましたので、2~3回ベーシストシリーズをやりたいと思います。

こういったブルージーなベーシストと対極に位置しているのが、スコットラファロ と言うビルエバンストリオの初代ベーシストとです。このトリオの演奏は何とも音楽の完成レベルの高い(?って表現でよいのでしょうか)凄い演奏です。

しかし私は、最近はエバンスとスコットの演奏は長時間は聴きません。過去に聴いているうちに気分が悪くなった記憶があり体が拒否反応を起こすようなところがあるからです。 美しい耽美的な音楽ですが内面にビルエバンスの一種の狂気(?)を感じてししまうのでしょうか?

このExplorationと言うタイトルのLPレコードを35年間大事に持っていてこのジャケットをみるとエバンスのピアノソロが頭の中で始まる位良く聴いているのですが…、ハービーハンコックなど他のピアニストと違って、疲れて家にに帰ったら時などはまず聴きたいとはおもいません。

ご存じの様にLa faroは1961年に突然交通事故で他界してしまい、Evansと数年しか共演できなかった訳ですが、互いのインプロビゼーションの芸術性は素晴らしいもので、その後のEvans の演奏を聴いてみてください。Eddie Gomezとの競演(Montreux のライブなどはで)などは、『こんなんじゃないんだよね・・・違うんだよ』、『Scottは何処に行ったんだ』って言いながら演奏している様に聞(聴)こえます。

本人がアル中と麻薬でで殆ど廃人になり奥さんや周りがられずに自殺するほど荒れた生活であったのでしょう。

エバンスのリーダーアルバムとなってはいますが、この二人の演奏は共にメロディー楽器としてスコットのパートが終わるとその続きをエバンスが演奏しています。本当に気持ちよくパートナーの演奏を聴いているのでしょう。

普通はピアニストはベーシストのベースラインを聴いてメロディーを乗せるので微妙にピアノが遅れて演奏するのがジャジーな雰囲気となってとても心地が良いのですが、エバンスとスコットラファロはこうした『粘り』が全く無く、フレーズが2人の演奏を行ったり来たりする。ベースもメロディー楽器の珍しいトリオです。しかもコードのテンション(和音のエバンス独特の響き)はこのトリオしか出来ない圧倒的にジャジーな演奏と思います。

Markaudio次期モデルの設計

8月の終わりに東莞(トンガン)と言う中国南部にある町の工場にMark(Mark Fenlon というMarkaudioのオーナー)に連れられて尋ねたときの写真です。

新しいAlpair7,Alpair12用に新しく採用するダンパーのテストが主目的でしたが、そこで20数年日本の某有名スピーカーメーカーの設計をやられていた松原さんと言う方と知り合いになる事ができました。

日本の貴重なノウハウをいっぱい抱えた方です。 私も仕事柄何度も広州市、東莞市、深圳市などに出かけますが、日本から消えてしまった物づくりの現場はこの辺りに沢山移ってきておりそこにはこうした方が結構いらっしゃいます。 思い直してみれば、マレーシアに流れた古き良きOnkyoさん、豊科にあったSony さんのEsplit、Technics さんの脅威の技術力。 ビクターさん、東芝Aurex(だったかな?)、トリオさん・・・・ 今思えば世界一の物凄い製造・設計能力だったのですね。十数年前までの日本は。

写真はMarkと松原さんが次期モデルのコイルの設計を打ち合わせている光景ですが、通訳していても、泉のように色々な設計の話が湯水のごとく出てきて、とてもおもしろい半日でした。これからはMarkとのコイルの共同設計とか色々と仕事の話をしています楽しみにしていて下さい。

新設計のダンパーについては松原さん曰く、『マークさんの要求は普通着目しない内容ですね。ダンパーの改善でこうしたストロークに対する効果は色々あるうちの10%ぐらいですから・・・でもだからやりがいがあるんですよ』といって嬉しそうに語っていました。結局もう1度ダンパーを設計しなおして販売となっています。確かに、私はAlpairシリーズとはずっと付き合っていますが、Alpair 7に30W位パワーを入れて(20Wがカタログ値ですから・・・お忘れなく)激しくコーンを動かすとマークオーディオの特長であるロングストロークに驚きますが、ぴたっと戻ってきます。縦に柔らかく横にぶれないと言うことが実感でき、音楽性の高い繊細で正確な低音を聞く事が出来ます。

工場から帰宅する時に松原さんが語っていた『日本人にノウハウを伝えられないのが本当に残念』といってたのが心に焼き付いています。私も若い人をサポートして当時の日本の力は遠く及ばなくても・・・・なんとか支援できればと思っています。

この写真はその日に工場で撮ったAlpair7の試作モデル(旧)です。ダンパーが量産モデルと異なっています。比べてみてください。

いぶし銀サムジョーンズ

初めまして
フィディリテムサウンドの中島と言います。
Markaudio(Markfenron trading) とCSSという2つの会社の日本向けの取り扱いをしております。今後とも宜しくご愛顧下さい。

このブログでは、Mark Fenlonの活動と日頃のオフレコ新製品の情報(結構予定変更になりますが)や、華南で頑張る日本のエンジニアの話など織り込んで楽しい情報をお送りしようと思います。が先ずは、お仕事の話を始める前に私の趣味のJazzのCDソフトのご紹介から軽く始めたいと思います。

私が住んでいる香港に一風変わったCDショップを見つけ定期的に通っています。変わり方が私には大変気に入ってまして暇になるとCDを漁りに行きます。何が気に入っているかと言いますと、先ず買う前に好きなだけ試聴してから購入できるのです。素晴らしいでしょう!もちろん日本では絶対考えられない世界ですが、それだけではありません。さらに驚く事に値段は何と一枚500円~800円で新品を購入できます。Xrcdの日本製3500円とプリントしてあっても値段はやっぱり800円です。

ですので、3時間程時間がとれる時に出かけます。20枚位メンバー名や曲から判断して棚から持ってきて一気に聞いて7,8枚を買ってきます。(大体最後は聴き過ぎて気持ちが悪くなってきますが)このお店に通うようになって、若い頃から聞いてみたいミュージッシャンだけれど後で失敗するかもとか、時にはバンドのメンバーがメチャクチャ魅力的だけど・・・演奏が良いのかなぁとかで手が出なかった演奏が手に入る様になりました。結果としてこうして手に入れたCDが今や部屋にあふれていて、隠れたJazzを満喫しています。

先ずは手元にあったSam Jones と言うベースを弾く人のリーダーアルバムです。The Chantと言うアルバムですが、本当に気持ち良さそうにピッコロベースを弾いています。4曲目のSonny Boy、5曲目のIn Walked Ray、次のBlue Bird どのソロも心が弾みわくわくしてくるPベースのアドリブが堪能できます、ナットアダレイ キャノンボールアダレイ ウィントンケリーなどそうそうたるメンバーが参加していますが、もうサムジョーンズの独り舞台!特にIn Walked Rayは太い指で弦が伸びてしまうくらい弾く黒人ベースの力強さ、何ともいえないブルージーなフレーズ、繰り返される(Chant-cantare)センスの良いフレーズがアルバムの写真を見るとバブロフの犬の様に頭の中で鳴り出します。Ron Carterのピッコロとは全然ちがうスイングジャズのサウンドです。

ところでこのアルバムは1961年にレコーディングされたものですが、やはりこの頃のレコーディングは中域のコンパクションがあまりされていないせいか音に生気と厚みがあって良いですよね。一度聞いてみてください。