CHN719 売れてます!

あけましておめでとうございます。スガノです。

今年もFidelitatem Sound、そしてMarkaudioをよろしくお願いいたします。

さて、前回のブログで取り上げたCHN719ですが、売れ行き好調のようです。ある販売店では、既に何十ペアと予約が入っていると聞きました(!)。早速工場に連絡し、増産を始めてもらっています。ご予約いただいた皆様、ありがとうございます。日本には今週中に入ってくるので、早ければ今週末には皆様のお手元に届くのではないでしょうか。

今回はCHN719をNC7kitに取り付けたときの特性と、バッフルの形やユニットの位置によってどのような特性の変化があるのか、見てみたいと思います。

上の画像がCHN719をNC7kitに取り付けた際の特性です。ユニットのエッジ共振やエンクロージャー角のエッジディフラクションによる凹凸は軽微で、低域は50Hzまで伸びています。1kHzを基準に-10dBで見ると40Hzまで出ています。良い特性ですね。

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エンクロージャー形状と周波数特性に関するオルソンの研究

上の画像はしばしば、「バッフルステップの研究」として紹介されがちですが、「エッジディフラクションの研究」でもあります。それぞれ似た現象なので混同されがちですが、大雑把に言うなら以下のような感じでしょうか。(もっと簡潔で適切な言い方があればご教授ください)

バッフルステップ:「バッフルの大きさ」と「放射空間が2π空間から4π空間に変わる周波数」の関係

エッジディフラクション:「バッフル角による回折波」と「直接波」の干渉(凹凸)具合

詳しくは私のバイブルでもある「自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック」をご参照ください。

NC7kitのエッジディフラクション(青線:音圧、黒線:位相)

VituixCADというソフトは本当にいろんな機能があり、バッフルの形によって周波数特性がどう変化するかをシミュレーションできます。上の画像はNC7kitに振動板直径80mmのユニットを取り付けた際のエッジディフラクションのシミュレーションで、もっと上に示したCHN719をNC7kitに取り付けた特性と比較すると、100Hz~5kHzの変化具合が似ていますよね。若干の誤差はありながらも、実用性充分のシミュレーションがきていると思います。3Dの形状はシミュレーションできませんが、角のR具合による変化を確認することは出来ます。

先に示した画像の補足です。赤丸がエッジディフラクションによる凹凸、緑線との差分がバッフルステップによる損失で、バッフルステップの「放射空間が2π空間から4π空間に変わる周波数」(遷移周波数とでも呼びましょうか)は、4kHz以上の周波数と比べて音圧が-3dBとなっている250Hzと言えそうです。(間違いや補足等ありましたらコメントやメールなどで教えてください)

以下にいろんなバッフル形状のとき特性がどう変化するか、羅列しますのでどうぞ。(音圧は青線です)

①4辺の角をR30mmで落としたもの
②ユニット位置を横にズラしたもの
③バッフル中央に位置したもの
④幅12cm、高さ90cm(ユニット高さ80cm)のトールボーイ
⑤直径10cmの円バッフル
⑥直径30cmの円バッフル
⑦縦横30cmのバッフル中央に位置したもの
⑧縦横30cmのバッフルで、凹凸が小さくなる位置に調整したもの
⑨幅20cm、高さ40cmの三角形バッフル
⑩JIS規格 標準バッフル
⑪JIS規格 標準密閉箱A型
⑫JIS規格 標準密閉箱B型(角:R100mm)

たくさんシミュレーション結果を挙げました。これらの結果から一般家庭に置くような実用的なサイズに共通して言えることは、

「凹凸ができるのは1kHz以上で、1kHzから100Hzにかけて約6dB減少してゆく」

ということです。そして、

「円や正方形などのユニット中心から各辺までの距離が一定の様なバッフルでなければ、それほど大きな凹凸はできない」

ということも分かりました。オルソンの研究ではユニットの直径に対してかなり大きなバッフルを想定しているため大きな凹凸が1kHz以下にもできていますが、現実的にそんなスピーカーはほとんどありませんよね。

バッフル形状についていろいろ述べましたが、個人的な結論としては以下の通りです。

「円や正方形でなければ、そして正確なモニタースピーカーを作る訳でなければ、バッフル形状は気にしても気にしすぎることは無い」

(cannot … too …構文の和訳みたいになってしまいました)バッフル形状による凹凸は、スピーカーを置く位置や、壁や天井からの反射音による干渉、そして部屋における定在波の影響と比べたら些細なものです。あれこれと悩むくらいなら、バッフル形状は見た目と実用性のバランス重視で決めた方が良いかもしれませんね!(あくまでユニット軸上1m地点での周波数特性の話です。点音源とか面音源とか、軸外特性の話まで言及すると面倒なのでこの辺で…)

以上、CHN719の特性とバッフル形状のシミュレーションについて、でした。

2月は中国の旧正月で工場の稼働が止まってしまうので、早く入手したい方は急いでご予約ください!

では、また。

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