設計と製造の現場から その2

前回の東莞訪問時松原さんに『Markの夢は日本のスピーカー工場で自分が設計したユニットを作るのが夢なんですよ』と雑談で伝えたのですが、今回は新しいユニットに採用されるコイル(このはなしは後でまた・・)の打ち合わせと、もう一つ、ある工場を紹介してくれることになりました。

訪れた所は東莞市という町のはずれにある小さな工場でした。ユニットメーカーの開発をしていた人たちが作った工場で、中に入ると日本製のカーオーディオ用のスピーカーをラインに流していました。本当に質素な工場でしたが、品管の考え方がまさに日本の5s(整理、整頓・・・・・躾ってやつでこの躾を中国で見につけさせるのが大変なんです)感覚で運営され、日本が培った良き時代のノウハウが匂う工場でした。この工場を運営する日本からこられている皆さんは皆20年~30年スピーカーユニットに携わり、JBL,Infinity,Bose,Altec・・・のOEMとして高級ユニットを日本で作っていた人たちです・・・・というその時代の最先端を引っ張ってきた人たちです。

しかしこの日ラインに乗っていたユニットは、繁栄していた時代とは比較にならない、カーオーディオ用のコモディティークラスのユニットでありとてもそんな栄光の時代を彷彿するものではありません。 お聞きした話を後をよくよく考えてみると私が親しんだ某社=日本の単売有ユニットの約半数はこの人たちが設計製造に携わっていた事に気がついて、なんだかほろ苦い気持ちになってしまいました。

それが、マークとの出会いが消えかけていた炭に火が燈りそうな気配です。多分この工場で生産したユニットを近い将来ご紹介できるでしょう。

工場の視察が終わり持ってきた無線と実験の3月号を松原さんにお見せすると、こんな会話が始まりました。

松原さん 『これは本当に優秀なユニットですよ。普通16cmクラスのメタルでこれだけ広帯域・低歪は技術的に難しいんですよ』

マーク 『そうなんだ、Tedに12cmコーンのフルレンジなんか不可能だといわれたんだ』 『でもAlpairシリーズでは極薄フロントサスペンションをつかっているのでA12ではコイルの直線性に随分苦労したんだ』 

松原さん 『でも接着工程を変えたらもっと良くなるんです・・・・』???なんでもうそっちの話にいっちゃうの???『日本のメーカーは・・・・と言う製造方法を取っており量産には向いているが音は悪くなるんですよ』『まえからこの製造工程を試したいと思っていたのでマークに話してください』

マーク 『松原さんのスパイダーに変えたらコイルの直線性、減衰特性が一編に解決したんだ。松原さんにお礼を言ってくれ。そうで無ければあの記事の驚異的な低歪は難しかった』 『Mr.Cxxxが作るスパイダーだとローリングが起こって・・・・・。松原さんのスパイダーに変えたらぴたっと納まったんだよ』

みなさん。上の会話、話がどっちを向いてるかわからないでしょう。両名とも強烈な技術者ですからもう思いついたらどんどん話は飛んで言ってしまいます。とうとう私は・・・

 『お願いですから、私が通訳するまで待ってくださいよ! 右と左で違う事を言われたら頭が痛くなってしまいます』 なんて・・

ちょっと雰囲気を感じて頂けましたか?といった具合で一日中スピーカーユニットの話をしていました。 夜は場所を変えて夜の東莞の街で打ち合わせ?です疲れましたが楽しい出張でした。

(ところで改めてブログで書きますが記事の累積スペクトラムの表記に誤りがあります。図13の綺麗なスペクトラムがAlpair12でDS16Fのそれとテレコになっています。実はちょっとお願いしている事があってLeanaudioの松本さんと連絡を取っていたら指ご摘を頂きました。有難うございます本当に頭の良い方でいつも驚かされます。)

今回はカメラを持っていきましたがなぜか電池が充電されていなくて写真はありません。ごめんなさい。

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